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中国:増え続けるベトナム人妻
溢れる非登録の子どもたち
広西チワン族自治区
中越国境間の結婚問題


インタープレスサービス(IPS)2002年11月20日
http://www.ipsnews.net/jp/2002/11/20.html


 ベトナムとの国境にある中国の村では今、ベトナム人女性と結婚する中国人男性が増加している。中国に不法入国してくる女性たちの継続滞在や、非登録の子どもたちの存在などが社会問題化している。その裏には、結婚仲介業者を絡んだ、人身売買も見え隠れしている。

 【ドンギンIPS(マ・グイウア記者)】50歳の中国人男性デング・ウエンドンさんは、13年前、ベトナム人妻と離婚した。2人の間にできた娘は、母親が育てることになった。それでも根気強い性格のウエンドンさんは、隣国ベトナムからやってきた女性と再婚した。「妻は27歳です。中国出身である叔母が、わたしの妻を育ててきました」。ベトナムとの国境から20キロほど離れた場所にある広西チワン族自治区(中国南東部)のベンナイ村で、貧しい生活を送るウエンドンさんは言う。

 ウエンドンさんは、いまでも、当時300元で買ったベトナム人元妻の写真を壁に貼り付けている。「彼女は、家事、農業ともに万能だった。けれども、わたしは貧しかった。結婚して7年後、彼女は、そんなわたしのもとを去っていった」とつぶやいた。経済的理由から、ウエンドンさんは、2度目の妻もベトナム人を希望していた。

 ウエンドンさんはテレビのインタビューで、「中国人女性を妻にするにはお金がかかりすぎる」と述べ、「周りの人々は、貧乏なことや、妻を持たないことを軽蔑する習慣があります。ベトナム人女性との結婚は安く済み、しかも家族を持つということで尊敬される面があります」と付け加えた。

 ウエンドンさんの2度目の結婚式から1ヶ月がすぎたとき、彼は、結婚について「大変に見えるかもしれないが、ひとつのギャンブルです。彼女が、私との生活を続けるかどうかは分かりません」と語る。

▽国境を渡ってくるベトナム人女性たち

 ベトナムとの国境沿いに住む中国の住民にとって、向こう側に住むベトナム人女性と結婚することは、ごく当たり前になっている。女性の売買は違法だが、ベトナム人女性にとって、この結婚は、強制された習慣になっているとの見方もある。

 1989年に中越両国が国交を正常化して以来、ベトナムとの間で、人やモノの出入りが発達し、国際結婚の習慣も増加している。実際、ベトナムから中国へ、1日通行パスで入国する人々が増えており、そのまま長期滞在する傾向も表れている。

 ドンギン市が1999年に行った調査では、1269人のベトナム人女性が不法滞在していることがわかった。現在の不法滞在者はさらに多いと考えられており、彼女たちの80%が、小学校卒という。

 広西チワン族自治区女性同盟の人権部門に務めるウエイ・チアオニンさんは、「大半のベトナム人女性は、結婚のために不法入国し、あるいは密入国している」と説明する。

▽マイさんの予期しなかった結婚

 ウエンドンさんは、8人の兄弟のうちの4人がベトナム人女性と結婚。32歳の弟ウエンクアンさんも、ハノイ出身の女性を約400元で買ったという。「彼女は美人だし、家事もよくやる。わたしの両親は、彼女ともうまくやっている」と語る。

 兄ウエンドンさんと異なり、妻に対し、さほどの心配を抱かない弟のウエンクアンさんは「わたしは、妻に完全な自由を与えている。わたしたちと生活を共にしたいのならば、そうすればいいの」と冷静に語る。

 ウエンクアンさんより4歳年下の妻マイさんは、高校を卒業している。「夫がもっと年を取っていたら、結婚はしなかったでしょう」と語るマイさんは、叔母に仕掛けられ、思いもしていなかった中国人男性と結婚することになったと説明する。

 マイさんは、1999年に地元ハノイに戻ると、両親からベトナムに留まるよう説得されたという。しかし、中国に残ることを心に決意した。マイさんは、中国とベトナムにいる家族の写真を指しながら、「両親と住みたい気持ちはあります。でも、ベトナムでいい男性と結婚できる保証などありませんから。今のわたしたち夫婦は、時々けんかをしますけど、夫は、わたしを脅かすようなことはしません」と話す。

▽ベンナイ村の男性たち

 ベンナイ村のタン・グオキアン村長は、村民1500人のうち、30人以上の男性がベトナム人女性を買い求めたと述べ、「ベトナム人女性と結婚する中国人男性の大半は、とても貧しいか、中国人女性と結婚するには年を取りすぎている」という。伝統的には、男性が女性の両親に8000元から1万元を払って結婚承諾を得る形式になっているが、ウエンクアンさんのような農民には、とても払えない額なのだ。

 男が集まって妻の話をすると、話題は、家事や家族への配慮の話が中心になる。男たちは、妻がいつ彼らのもとを去ってもおかしくないことを十分に理解しているようだ。

 ベトナム人女性を高速道路から連れてきたペイ・チンフーさんは、ベンナイ村の30%から40%の男性が、ベトナム人女性と結婚しているという。「国境が解放されたおかげで、村民は中国式の結婚が可能になった。しかし、26歳から30歳の若者が、なぜ、いまだにベトナム人女性と結婚したがっているのか理解できない」との疑問を抱いている。

▽増え続ける非登録の子どもたち

 国境地帯に住む中国人・ベトナム人同士の結婚は、広西チワン族自治区のほかの7地域にも広がっている。

 広西チワン自治区女性同盟は、1999年の時点で、8002人のベトナム人女性のうち90%が地元の住民と結婚しているが、ひとりも正式な届出をしていないという。9745人の子どものわずか0.3%が、正式に登録されている状況だという。

 この状況から、警察は、ベトナム人女性の売買を摘発し、女性たちを本国へ送還する対策を試みたが、解決には至っていない。地元警察のキ・フーエイ署長は「私たちは、彼女たちを犠牲者と考え、十分な配慮と教育を施している。しかし、すでに中国に何年間も住み続け、本国送還を受け入れない女性たちには、不法滞在者という扱いしかできないのです」と語る。さらに同署長は「女性をベトナムに送り届けた後、私たちが中国に戻ると、彼女たちがすでに再入国しているということさえある」と付け加える。

 同署長によると、これまでに女性売買を行っていた男性数人が逮捕されているという。しかし、複雑なのは、結婚させられることを知らずに中国に連れてこられた女性たちが、結婚後に中国に残ってしまう、あるいはベトナム帰国を拒んでしまうことだという。また、地元警察は、数年に渡り住み続けた土地の習慣を崩壊する恐れが出てくるのではとの不安も抱いている。

 広西チワン族自治区で調査を行った国立女子大学のリウ・メング教授は、「この地域における状況は、不法移民であるのか人身売買なのか、複雑な思いにかられた」と説明し、「ベトナム人女性が中国に入国する目的は、将来の夫を見つけること、あるいは、お金が目当てです」という。

 このようなベトナム人女性の売買または不法移民は、深刻な社会問題だ。広西チワン族自治区女性同盟のウエイ・チャオニングさんは、「これらの結婚は重婚の場合もあり、中国の婚姻法に違反していることから、保護の対象になっていません。非登録の子どもたちは、健康やそのほかの保障を受けられないのです」と述べている。

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